鎚で金属板を打ち起こし整形する「鎚起」の技術が燕、分水に導入されたのは、江戸時代の中期と伝えられています。当初は、鍋・釜などの日用雑器が作られていましたが、明治の末期頃より装飾を施した酒器、茶器、花器などの嗜好品が作られるようになり、昭和56年には経済産業大臣指定伝統工芸品の認定を受けました。鎚起の製法は、一枚の金属板を鎚で叩いて整形し、鎚目を生かしたうえに着色を施すもので、表面に浮かぶ優美な肌合いが特徴となっています。素材の銅と銀には金属イオンの作用により浄化し、花瓶は花が長持ちし、酒器はお酒の味を引き立てる性質があります。また、アルミの2倍、ステンレスの25倍という優れた熱伝導率により、鍋は熱が容器全体に行き渡り、逆にカップなど冷たい飲み物を注げば格別な清涼感が得られます。鎚起の器は使い込むほどに味わいを増し、手にした人の愛情に応えます。